2000 GAO12月号
ライ 第126話


本来ならここら辺で、最終回に至るまでのメディアワークスとのドタバタについての毒日記を書いてやり たいところだが、いかんせん制作日記が遅れがち…つーか怒濤の遅れなんで、ここは涙を飲んで先送りする。 何せ書き出したら、今回は今回で山ほど書きたいことがあるので、制作日記二、三ヶ月分ぐらい軽くぶっ 飛んでしまうから自重させていただこう。勿論何とか制作日記完結の目処が立てば、思う存分書 かせて貰うが

さて今回も師真・英真の大覚屋兄弟の話が続く。だがその前に閑話休題ではないが、斉王都陥落以来消息 不明になっていた(いや、本当にどこかに行ってしまっていたわけではないが)三楽斎について、少し描 いてみた。彼は斉王都の事変の出来事や、その後の事後処理ですっかり意気消沈していて寝込んでいるわけだが 最初はここら辺で、雷に対して遺言を残して死んで貰うという考えもあった。師真とは又別口の温情に満 ちた、帝国運営の策を献じて死ぬのも彼らしいし、色んな意味で、友人でもあり、腐れ縁でもあった孟閣 の後を追うのも良いかと思ったのだが、文官の中で、年輩の人間が少なくなるのも最終回辺りで、困るの ではないかと思い止まったのだ。そこで、臨死体験をして、孟閣に現世に追い返させられると言うエピソ ードを作ったのだ。何となく間抜けな話だが、彼には合ってたと思っているがどうであろうか?

三楽斎はこのまま最終回まで出てこないので、ここら辺で彼のことをまとめて書いてみよう。

このキャラクターも今まで描いてきた真鍋漫画の中では初めて登場するキャラクターだ。それだけに色々 苦労もさせられたキャラクターではある。もっともライに出てくるキャラクターは今まで描いたことがない と言うキャラクターが多いので、何も彼だけの話ではないが。

まず口ひげのキャラクターだけでも初めてではないだろうか?これがこれで意外と難しかった。初めて な分何処に髭を置いたらまともに見えるかという、どうでも良いことに四苦八苦したり、なら口との位 置関係はどうするかと言うことに悩んだりしたものだ。漫画でよくこの手の口ひげキャラは口を閉じる と、口がどこかに行ってしまうことがよくあると思う。読んでいる時は何も感じなかったが、いざ、自 分で描いてみると、何とも不思議な感じだ。後、この手の小ずるいというか世渡り上手なキャラクター というのも描いたことがないので苦労させられたね。前半はそー言う部分が強調され、お年を召してから はなかなか味のある部分が出せたとは思うが。そう言う意味では孟閣とかも歳を食ったら丸くなって、 イイ感じになったな。

書いていて思いだしたが口ひげのキャラには「アウトランダーズ」の雅人とか何とか言うカラスがいたよ。 すっかり忘れてた。

キャラ作りに苦労した時に真鍋が使う常套手段は他の漫画にも登場させ、それぞれ別の性格を持たせて 成熟させライの中でそれらを結集するという手だ。だから三楽斎とほぼ同型のキャラが同時期にライと ドラクゥーン、そしてジャムカに登場している。しかも微妙に性格や癖を変えて。ジャムカに出てきた ハルビンからは金のために平気で人を裏切る油断ならない悪玉的要素を、そしてドラクゥーンのアコギ ルドの評議長からは、一見いい加減そうに見えながら実は結構骨太のやり手の実務家という要素を三楽 斎は引き継いでいるのだ。しかし三楽斎と言うキャラクターを確実なものにしたのは何を隠そうあの忌 まわしいアニメである。未だあの時点で大して登場していなかったこのキャラを声優の小野氏が実に上 手く演じ味を出してくれたおかげであるのだ。もっとも戦艦に乗って体当たりするというのはどう考え ても彼のキャラから見て不自然ではあるが…

こうして作り上げられた三楽斎は孟閣ら武官とは常に対照的に、そして師真のもっとも頼りになる重臣 として活躍することになる。初期に見られた孟閣との対立も有耶無耶になってしまったが、それも孟閣 が三楽斎に誠実な部分もあると言うことを知ったからであろう。この激動の時代に主君が家臣を選ぶの と同様に家臣も仕える主人を選ぶのだ。三楽斎の取った行動を非難するのはこの点では筋違いだろう。 孟閣の感じた三楽斎に対しての嫌悪感は、南京楼で出来たばかりの雷の勢力に異質なものが入って来る と言う不快感から感じたもので、その後は片や軍事の片や行政のトップとして家臣団の柱になり雷を支 えていき、孟閣の最後となる斉王都攻防戦では互いに両輪の活躍をして、最悪の事態だけは防げたのも 二人の間に信頼という感情が産まれていたからで、描く方も、それを意識して作画して言ったわけであ る。

師真が大軍師、孔明や張良なら三楽斎は紛れもなく漢の簫何に値する人間だ。どの時代も後方をいかに まとめ遠征軍を飢えさせないかが勝敗を握るという。遠征軍を率いる雷にとっても自分の運命を握る人 間とも言える存在で、三楽斎に対しての絶大な信頼が伺える。簫何はその信頼と裏腹にやがて漢王に疑 われてその疑念を晴らすのに躍起になるわけだが、雷はそこまで猜疑心はないので、彼も存分に働けた わけだろう。

原作者にとっても三楽斎はあらゆる意味で、成功したキャラクターだと思っている。いきり立って南京 楼に進駐した野戦師団の将校連中だけではとてもではないが話が進まないし、そこで出会う師真への橋 渡しとしても重宝した。天下統一の行程に当たって行政、経済、外交、弁舌などを作品の中に織り込み、 表現出来たのも三楽斎というキャラが居たからである。

所でその後の三楽斎だが雷の即位後三年で引退、まもなく死を迎えると言うことになっている。真の主 君に仕えるのが遅かったが、その中で自分の才を存分にふるい、満足して死を迎えたことであろう。家 族構成などについては描いてはいないが、その息子達は出来たばかりの竜我王朝で、様々な活躍をして いるに違いない。

三楽斎が復帰した後は軍議のシーンに移るわけだが、ここで敢えてこのシーンを入れる必要と言うこと はないのだが、雷の現場復帰を明確にするために挿入した。具体的に軍議の内容を描いていないように 補給状態の悪化ぐらいしか問題はないのだが…この補給問題も結局は五丈軍の侵攻に何ら問題にはなっ ていない。ただ少しぐらい足かせも必要と言うだけである。何せ、今のところ足許の斉王都での争乱以 外五丈軍の南征に確たる障害は起きていないのだ。一番の問題である姜子昌も今は亡く、南天軍の主力 も撃破した、南蛮庶部族も雪崩を打って五丈に寝返っている、正しく五丈軍の行く手に遮る者無しなの だ。しかしこれでは面白くない。それで補給問題を出しているわけだ。他にも南蛮の気候による疫病の 発生というのも考えたが、これは補給と違いそれっぽい絵を描かなくてはいけないので割譲した。漫画 のことを考えると絶対にこっちの方が面白いのだが、補給は会話の内容だけで済ませられるからなぁ。 まぁ防疫対策は師真らも最も気を付けている問題なんで、それは起きなかったと言うことにしよう。

将軍らの愚痴にあるように補給問題は軍団の再編成まで話が及んでいる。弾薬などの軍需物資は戦わな ければそれで済むことだが食料は何をしようとも必要である。何せ連れて来ている800万の兵士だけ でも彼らを数年食べさせていくのはそれこそ至難の業で、しかもこれに未だ多くの軍属、挑発した人夫など が含まれているのだ。三楽斎が率いる五丈と如晦の統べる智からの補給体制がガッチリ行ってこそこの 多くの飢えた口を満足させれてたのだがその一方のラインが今斉王都の混乱で、かなり細くなっているわけで 勿論今日明日中になくなるわけでもないが、兵士というのは食料が無くなってしまってからではなく無 くなっていく過程で不安になるものだ。

この時点ではマジで誰かを留守居役というか、後方での待機というのを考えていたのだが、先の話で判 るように、結局、二人を最外郭包囲網「龍の陣」として残すのみとした。それは最終決戦にオールキャラ出 演にしたいからと言う作家側の都合があるからだ。戦功を挙げていない兵士の恥を力にするというのは、 古代中国でも西洋でも良くあることで、まぁ何でも兵士の戦意に結びつくと言うことである。何時かは この話をモデルにしたエピソードを入れようと思っていたので、将軍総出演の代償として用いることに なったわけだ。

さて、ここからが今回の話のメインである、英真の裏切りの発覚である。まぁ裏切りというのは少し酷 ではあるが、当の竜王・雷はそう考えたから、師真・英真の大覚屋兄弟に悲劇が起きるのだ。

謀臣傅格の報告を受けた雷は激怒する。勿論雷のような性格の人間は冷たい氷のような怒りを表す男だ。 羅候のように直情型に感情を露わにするタイプではない。いや、昔の雷ならそうだろうが、怒鳴り散ら す方は羅候の専売特許になったからね。それでも指揮棒をへし折ったところに、怒りの大きさを表した つもりだ。この演出のためにわざわざ指揮棒を持たせたんだから。

しかし、何故雷はここまで怒りを露わにしたのだろうか?しかも友人である師真の前で彼の 身内に対する怒りをあからさまにだ。しかもその彼に、弟の始末までを暗に要求したのだ。いやその厳しさから命令 だろう。北京沖での戦いではああまでして英真の命を救ってやった雷だ。何故ここまで峻烈な怒りを表 したのだろうか?

彼が英真を北京沖で助けたのは、未だ彼の存在が自分の天下への行程で大した障害になっていなかった からだ。身内が人質では自分の知恵袋である師真の働きも鈍るだろうし、当然それ以上に親友の苦悩を 一時期的にしろ和らげようと考えたのだ。勿論あの行動を英真がどう取ったかは雷には判らなかっただ ろうが、どっちにしろあれが一時しのぎの策であって、英真を羅候の許から完全に切り離さない限り、 完全な解決策にはならないのは分かり切ったことだ。雷は言外にその解決を師真に任せ、師真も雷の温 情に感謝しながらも、知恵を絞り英真救出を策していたのだ。だが英真の行動はこの二人の上を行って しまった。師真としても弟の性格は判っていたので、賢明に知恵を絞っていたのだがなんせ遠隔地であ る。彼が言っていたようにリモートコントロールが効かない遠さだ。この場合英真本人の行動と意志が 重要になるのだが、この二つとも師真の頭に描いてる構想の上を行ってしまったのだった。しかも英真 の考えはあろう事か師真本人も巻き込もうとしているのは明白となったのである。つまり師真の雷に対 する影響力を期待されてしまったのだった。これはもう破滅的である。

では師真は弟救出にどういうシナリオを描いていたのだろうか?やはり南天王朝の崩壊の隙に誰か人を 差し向けて連れ出すというのが一番である。羅候の南蛮王都から叩き出す策にはこのシナリオも含まれ ていたのだ。撤退の混乱の中、南蛮王都内の内通者か五丈の手の者に英真を否応なくひっくくり進駐し てくる五丈軍が到着するまで匿うというのがベストである。なのに英真はその策を自らの手で葬り去り、 更に救出不可能な南天王朝中核に潜り込んでしまったのだ。

雷も師真から聞いていたかどうかはともかく、羅候を南蛮王都から追放することは英真救出に役に立つ ことぐらいは判っていた。それも大事ではあるがそれ以上に羅候の巻き返しを恐れていたわけだから切 り札の傅格を送り込み、南蛮宰相をも巻き込む大がかりの策を実行していたのだ。しかもそれは予想 以上に上手く進行していたのだ。羅候の側近でもある南蛮宰相に南蛮三王も協力を約している。 羅候の周りにはそのような陰謀を嗅ぎつけるほどの男もいない。英真が感づかなければ確実に内乱が起 き、羅候はこの南蛮王都から這々の体で脱出する以外はなかったであろう。妻の実家からも捨てられた らそれこそ南天王としても羅候の威信は地に落ち、南天残党軍の戦意も無くなってしまう、戦略的にも とても大事な策であったのだ。

だがその策が破られた。不要な会戦での人員の損失、送り込んでいる優秀な家臣らの命など、失うもの は多い。しかも補給が苦しくなっているところで五丈としては急戦しかないのだ。それに会戦はどう仕 込みをしても戦ったら結果は五分五分だ。もし負けでもして踏ん張れなかったら五丈軍は今まで得てき た大半を失う可能性もあり、又羅候の威信が回復すれば、戦いは長期に及ぶことも考えられる。五丈も この戦いに国力の総力を結集している。兵士も国がスッカラカンになるぐらいかき集めたわけで、物資 もこれ以上戦いが続くと国内を麻痺させてしまう状況だ。五丈も南天とは違った意味で負けるわけには いかなかった。師真としても絶対に負けない形を作らないと戦いには踏切る気はなかったのだ。そのた めの羅候の南蛮王都追放策であった。

雷の怒りはこの戦略的挫折もさることながら、それを行ったのが腹心中の腹心、軍師丞相である師真の 実の弟であったことにもある。雷は師真に弟の人質の件の処理を任せていたのだ。師真もそれを賢明に 行っていたはずである。だが結果は最悪な状況となってしまった。軍師の実の弟がその兄の策を破って しまったのだ。雷からすれば兄師真の管理上の責任問題でもあったわけだ。恐らく雷は師真にこの件に ついて今まで経過を一々問うことはしなかっただろう。だが、結果がこう出てしまっては軍の最高指揮 官として、直接命令を出す以外はなかった。雷は師真の弟への感情はよく理解していた。あの冷静な男 が泡を食うぐらい弟のことでは心を痛めているのは、側にいても伝わってきただろう。それだけにその 兄弟という繋がりの深さを知っているからこそ、尚更その絆を断ちきることを求めたのだ。それは師真 という股肱の臣を失うことを防ぐためである。遅かれ早かれ、英真の行動は師真の立場を悪くするだけ である。英真の和睦策が師真という肉親の情の繋がりを前提に動いているのなら、これは自分の第一の 臣下がその意志とは関係なく巻き込まれていくこととなろう。師真の苦悩も増す。雷はそれを雷なりの 何も残さない形で解決しようとしたのだ。もう中途半端や凌ぎでは許されないのだ。

師真は自分の心を決めようと努力するあまりに一心不乱に古文書を復唱する。ここで彼が言ってる言葉は この制作日記にも時々登場する古代中国の秦の国の思想家・商鞅の言葉である。彼は法家の代表的な思 想家で、政治家としても第一級の人間である。その彼の言葉をまとめたのが商君書でこれは後の三国志 の曹操や劉備も読んだ政治家としての必読書でもある。秦も漢もこの思想に乗って天下を統一したと 言っても過言ではない。ライもよくこの本から引用している。ここで、師真が読んでいるその一部を解 説しよう。ただし、ここの文章は一部私が手直ししている。それは文章全体の流れから見て不要と思っ た部分とか、足した方が何となく意味が読者にも通るかと思う部分である。ここではその内容が全て読 者に判らなくても構わなく、ただ何かを振り切るかの如く読書に没頭している師真の姿だけを感じてく れても良いのだ。全体的に通して言っているのは、法の厳格化とか、思いやりは返って国のためには良 くないとかそー言う類のことだ。

弁慧は乱の賛なり。礼楽は淫佚の徴なり。慈仁は過ちの母なり。任誉は姦の鼠なり
(弁舌は反乱を助け、礼楽は怠情を招き寄せる、仁慈は過ちの母で、任侠は悪事の手引き。)

コレを為政者側から見ると反乱は手助けする者が居るから起き、怠情は招き寄せる者が居るから広まり、 過ちはそれを産むものがあるから生じ、悪事は手引きする者が居るから止まないと言うことになる。つまり 政治から弁慧、礼楽、慈仁、任誉を排せよと言うこと。

善を用いれば即ち民その親に親しむ。姦に任ずれば即ち民その制に親しむ

まぁこれは善というのは徳という言葉に置き換えてくれればいいと思う。徳なんかで治めたら、人間身内 ばかり大事にしてかばい合う。姦は法に置き換え、法で治めれば人間は国の統制に従うと言うことで、人間 の弱さというか、徳で治めると過ちを犯してもかばい合ったりして表に出ず、結局は国自体が弱くなるけど、 法なら過ちを犯した者を誅殺出来るからそれは即ち、法によって人民を押さえ込め、そうすれば国は強く なると言ってるわけ。

ここまで書いただけでもかなりきついことを言ってるわけだけど、法家というのは人間は元来悪であると いう性悪説から来ているので、徳とか倫理とかを全然信じていないと言う考えからだからである。人間が 元来善というのはどう考えても理想であり、性善説というのは孔子などの理想を求める思想家が信じる説 で、実際の政治家は殆ど性悪説を基本とした法家の支持者であり、あの諸葛孔明もそうである。まぁ今の 日本の会社や何やらの倫理とか言う物を見てても判ると思うが...そんな物で悪事が無くなることなど 無いことが判るだろう。ましてや世は戦国時代。いかに国を強くするかが問われる時代だ。そう、これは 富国強兵を目指す国の法則なのだ。

この後師真が言ってる言葉はもう一々解説するのがめんどくさいので、まとめるけど、要は法の厳格な 施行を言っているわけで、コレも又激動の時代に一番大事な信賞必罰を言っているわけである。今の平和 惰弱な日本ではとても押しつけられない政策かも知れないが、内憂外患で、改革を叫ぶばかりの時代にな っているのなら、参考にもなる思想だと思うけどね。今は賞を与えると妬み、罰を与えると庇う変な時代だ。

ここの中で「理は情を制し、法は理を統べる」というセリフがあるが、これは全くの作者の造語。何か訳 のわからん引用が続くので、少しわかりやすい言葉で、何となく師真が唱えていることの意味が、判るよ うにはしてみたつもりなんだが....

勿論最初書いたようにここら辺の意味が全然分からなくても一向に差し支えはない。要は作者の自己満足 演出であるから。

師真の苦悩を見透かしたように動き出したのがこの和睦策の一方の主役である元南天宰相龍緒。この龍緒って、 最後になればなるほど、その勢力の大きさが目立って来ちゃったね。最初は一家臣、しかもいかにも爺って 感じだったのだが、何時の間にやら三代に渡って仕えたことになり、おまけに三代に渡 って宰相を務めたと言うことまでに飛躍し、最後には王に王冠をかぶせる役、つまり王族を含めた中で最大勢 力の長になってしまった不思議な男だ。これでは南天は完全に部族の集合体であり羅候はその一族の一人 の長であったのが他の部族に推戴されて王になった形になってしまう。これは五丈とは違い中央集権が 進んでいないと言うことを表すためと、民族間で生き残りを賭けての攻防を明確にするために意識的に龍 一族を大きく見せたためだ。やがて羅一族という王族が登場するも同じ理由である。その王族羅一族 を凌ぐ大勢力龍一族であるが、一族筆頭の龍緒が隠居した所で、その権威は微動だにしない。羅候も怒り にまかせて龍緒の官職は剥いだかも知れないが、その一族を自分の王宮から追放することはしていない。 となると、当然龍緒の考えを実行する人間が随所に残っているわけだ。龍緒は宰相という表舞台からは消 えたが、今度は裏に回ったことで返って大胆に行動を起こそうとする。いや、宰相であろうとなかろうと 羅候に対する働きかけは対する相手の性格がああだから、大した効果はなかっただろうが..

つー事で、羅候の説得は英真に任せて彼は羅候以上に和睦を飲まないであろう五丈側に挑むことになる。

ここで、何やら龍緒の側近のような男が二人登場しているが、これも龍一族という組織を表現するために 登場させた。結局一度も名乗ることがない二人だが名前も一応考えていて龍和と龍紅である。龍緒にくっ ついている所を見ると、官職には就いていないようだが、恐らく龍緒の領地を守る邑宰と言うところか?

龍緒は師真を動かし、その先にいる雷をも動かせると信じていた。姜子昌の言い分を羅候が聞いていたよ うに、雷も師真の言うことなら聞く耳を持つと考えた。英真が自分を訪ねたのと同じ事をしようと考えた わけだ。それに師真とは同じ識者同士、通じる部分もあり、いきなり武一辺倒の雷よりかは与しやすいと 見たわけだ。だがこの老宰相は、雷という人物を計り損ねたようだ。そして彼に対する師真の役割の大き さをも計り損ねた。これが彼らの考える和睦が画餅に化す要因である。

しかしここらの和睦の話は正直作者側としても苦労させられる。作者自身、和睦は成立しないと考えてい るからだ。そんなことだから、なかなか説得力のある展開にならない。読者にも納得出来る和睦を考えな くてはいけないのに..現時点で和睦なんか出来るわけないよ、だって竜我の方が勝ってるし〜と読者の 大半が思っているのなら尚更だ。読者がああ、そうか、よく考えてみるとこー言う所に五丈に弱点があり、 そこを突いていって、このように説得すると和睦も出来るかなって思わせなくてはいけないのだ。結局そ の為には細かい事項の積み上げしかないのかも知れない。この号の末から来月号に渡ってその作業が行わ れることになる。

師真に対して説得する龍緒だが、この展開で、読者側にもしかしたら師真は弟を助けようとして、和睦を 言い出すかも...とか、雷と師真の間が壊れかけてる?とか少しでも思ってくれたら幸いである。これ も和睦実現のための事項の積み上げの一つだからだ。



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