1999 GAO9月号 ライ 第111話 姜子昌の決死の覚悟の出撃で引いた前回とうって変わって、今回は久方ぶりに五丈サイドのお話だ。スト ーリーが南天と二分化されているので、どちらかで大きな動きがあると、片っ方が放って置かれてしまい、 一年近く忘れられていた時が多々ある。昔、雷の骸羅討伐戦の時、アニメ放映時にも関わらず、羅候も正 宗も出てこなくて、雷方面だけの話で過ごしたこともあったが、今回もストーリーの二分化プラス重要事の連 続なので、大きな場面転換のタイミングが難しい。おまけに広大な銀河を舞台にしているため、事件事件の間に かなりのタイムラグが起きるので、その調整が必用だ。因みに大ざっぱだが、この漫画の時間と距離の関係 は以下のようになっている。例えば五丈の軍勢が斉王都から南京楼を経て国境に達するまで約一月、同じ く羅候が大王里から国境に達するまで同じく約一月、軍使とか伝令はその行程の三分の一だ。ここら辺を 計算しながら描いていかないと、いろいろつじつまが合わなくなってしまうし、逆にそのタイムラグを利 用した話作りもできるわけだ。 まぁ、そんなこんなで今回は斉王都の話。公叔と南天にそそのかされた西羌軍が斉王都に向かったという 話を描いて随分経つなぁ。読者の皆さんはもうすっかり忘れてしまったのではないか?とにもかくにも、 斉王都は大ピンチに陥るのである。このエピソードは我ながら辛いもんがあるので、かなり描くことに迷 いがあったが、すでに矢は放たれてしまっている。もう、どうしょうもない。ここは歴史という残酷性に 徹するしかない。 最初の場面は西羌の都、秦宮括の母親、皇太后の登場だ。ここで別段、彼女を出す必要はないのだが、恐ら く今後は滅ぼされるまで出てこないんじゃないかと言うことと、先にも書いた漫画上のタイムラグ のために敢えて出ていただいた。と言うのは、北京沖の会戦の結果を彼女は知らないと言うことを表すた めだ。次号の話になるが、この時斉王都近くまで進出していた秦宮括らは、この南天の決定的な敗戦を知っ ている、しかしその知らせは西羌本国には届いていない。それだけ離れているのだ。何もかも同時進行し ていたらそれだけ、話は簡単になるが、その時間差はどうしても必要だろう。三国志でも、その距離の遠さ故、蜀と 呉の共同作戦が機能しないと言うシーンもある。もし、本当にアニメのように銀河の端から端まで瞬時に連絡が ついてたら、西羌軍の動きももっと敏速になっただろうし、また逆に南天敗戦の知らせが届いていたら、 秦宮括とて、思い留まっただろう。踏み出してしまった秦宮活の後悔がこの戦いを更に熾烈なものにする のだった。 余りストーリーには関係ないのだが、その皇太后の前に重用されている導師が現れる。これはただ、権力 者の周りにはこーいう人物もいると言うことを書きたかったのと、雷や師真の様な現実主義者は絶 対近寄らせない占い師風情を大事の折も重用する西羌という国の後進性をも描きたかったのだ。 一方五丈には当然、北京沖の大勝利は伝わっている。戦時国債の発行などで、軍事費を賄ってる三楽斎な どにとっては、この手の情報は早く伝われば伝わる程良いのだ。当然勝利を祝っての宴会となる。主人は 五丈の全権を雷から任されている三楽斎。この宴会の席で華玉は公叔の只ならぬ様子に気付くのだが、こ の男ようやく悪そうな顔になってくれた。何せ最初の頃は、七賢人の一人程度の描き方なんで、実に平凡な 顔をしてたのだ。そうそう、この七賢人だが、今や押しも押されぬ重臣となった如晦は別格として、ほとん ど画面上には現れない。皆最低でも侍中クラスにはなってるはずなんだが、とんと姿を見ない。どこへ行 ったのだろうと探してみると、いたいた、コミックス13巻58ページの3コマ目、どうやらこの二人が その一部らしいぞ。名前すらないが..結局、私は七賢人の中で如晦に続いて、画面に登場していた公叔を 悪者に仕立て上げたわけだ。真鍋の頭の中も人材不足という訳か。まぁ、突然新キャラというわけにもい かんか。今考えるともうちょっと、こいつ何かやるぞと言うのを臭わせていればよかったかな。これもあ んまし先のことを考えずストーリーを積み上げていく作者の悪いところだ。いや、実際、どーいう形で西羌 軍に斉王都を襲わせるかは色んな案があって、なかなか決まんなっかたし、内通者を置くかどうかも悩ん でたからね。こーいう失敗は次の作品に活かそう。 華玉は公叔を私邸に招く。うまいことやって、彼の口から真実を聞き出そうというわけだ。彼女がまだ玄 偉の部下だった頃、幻術のようなものを使っていたが、それを使えば簡単に口を割らせただろう。でも彼 女は多分李張あたりに厳しく諭されたのだろう、その手のワザは封印したようだ。従って、口を割らすは 古今東西、やはり酒である。以前、私も角川が分裂してコンプも二分、後にGAOとなる分裂し、出ていった側のコンプ の片割れを、どの出版社が引き取ってくれるかが、まだ絶対の秘密だった頃、どうしても知りたくて、(そ りゃ自分の、そしてライの将来がかかってるからね。)当時の担当だったA川に散々酒を飲ませて白状さ せた事があったけ。絶対黙っていてくださいよって言われたけど、アシスト達にベラベラしゃべっちゃっ たけどね。まぁ、過去のことです。 ありゃりゃ、公叔、あっさりとバラしているよ。ちょっと単純だけど、 陰謀なんてこんなもの。古代中国史でも暗殺だ、クーデターなど色んな陰謀事があったけど、大抵がこ の程度のことで発覚している。人間、なかなか秘密は守れないもんです。もうちょっとアダルトに色仕掛 けでもよかったかなぁ。公叔の寝言を聞き出すとか、それともベッドの上で例の幻術を使うとか、そもそ も華玉って、色絡みのキャラなんだから、それくらいやってもいいかなぁ。よし、単行本で書き直してみ るか。師真も別段怒りはしないだろうて。華玉ファンは怒るかもしれないけど。でも彼女は紫紋らと違って、 大人の女の魅力担当だしね。どうやって聞き出したかを知った時の三楽斎の反応が楽しみだ。書き直し決定! 最初、華玉は全然信用されなくて、逆に公叔に丸め込まれた三楽斎によって、またまた牢屋にぶち込まれ る案もあった。そりゃそうだ、彼女はちょっと前まで、雷と敵対した玄偉の腹心である。戦略的のライバ ルならまだしも、個人的にも雷の命を狙った女でもあるのだ。いくら師真や雷が許して、幕閣に迎えたとし ても、他の古参の幹部達にとって、どちらを信用するかと言えばやはり公叔の方だろう。けど、これじゃ、 華玉がかわいそうだなって思い、やめにした。相変わらず甘いわ、俺って。 公叔は雷から預かっている割り符を使って、どんどん西羌軍を五丈領内に引き吊りこんでいた。関所をどう やって突破するかを具体的に描く予定であったが、ページ節約のためにそーいうのは削除。他にも実は公叔 が臆病風に吹かれて、秦宮括にどうしても割り符を渡せず、恐怖の余り(雷を裏切ったことに対して)血を 吐いて、憤死するという案もあった。しかしながら、それでは余りにも小物と言うことでヤメにした。まぁ、 どっちにしろ、ろくな死に方はしないだろうけどね。 日記にも書いてあるけど、メディアワークスが100%出資の子会社が出来たそうな。子会社と言えば聞こ えは良いが、詰まるところ外部に一つ下請け編集部を作っただけのこと。別にGAOだけの仕事じゃなく、 例えば集英社とかが持て余し気味な某麻宮の担当もやるとか言ってたな。コミックス重視で頑張りますとか 言ってたけど、トップがMWのメディア展開の責任者(ライのアニメの時の戦犯の一人)、その下が元バン ダイの出版責任者と聞けば、期待薄である。因みに真鍋の担当、安藤氏もここの所属だ。リストラかな? 他にもコンプ、GAOを通じて、コミックス関係の責任者として、お付き合いのあった、石川女史が退社し ちゃった。思えばソーサリアンを書き下ろしにするとか言ってた頃からの付き合いで、最も長く付き合った 人だが、何かとメディアワークスと話がこじれると、この人が矢面になり、責任を取らされていたような気 がする。まぁ、責任を取るから責任者なんだろうけどね。最初の大量原稿紛失事件の時も、結局、個人とし ては、この石川女史がペナルティを食らい、減給10%6ヶ月の処分を受けていたな。離任の挨拶状にはソ ニーマガジン社に移ると書いてあった。ヘッドハンティングで管理職になるのか、それとも一編集としてや るのかは知らないけど、個人的には現場が似合う人じゃないかな。 あれ、なんだかいつもより制作ニュースが短いなって思ったら、オヤジ達の話にかまけて、数少ない潤い である、紫紋達の話を忘れてた。そうそう、雷の浮気話のお話だ。浮気の相手は事もあろうに、自分の命 を狙った、李扇である。しかも、常に正妻紫紋の側にいる、女官なのだ。勿論子を作ることは天下人とし て、大事なことで、それこそ、後宮には300人とも言われる女達が、いつかは雷のお手つきもあろうと 待っているのだ。だが、そーいう子を作るためだけの女じゃなくて、李扇にのめり込んでいるところが、 いかにも雷らしいし、女性関係の無頓着さをも表している。そこいら辺の経過はこの冬発売の同人誌で詳し く描かれるが、紫紋も紫紋でそこいらの雷の性格をよーく知ってるので、別段目くじらも立てないようだ。 嫉妬に狂う女を描くのも楽しいかもしれないけど、雷の女性関係はまず、紫紋にぞっこんという大前提が あるので、むずかしいか。これで紫紋がおばさんになってたら、若い女に走る雷と何かあるかもしれない けど、まだまだ美貌ではそんじゃそこらの女に負けないって、自負してる彼女だし、雷もそれこそ、なめ るようにかわいがるので、取り合えずこの夫婦は安泰でもある。浮気性の男と、その男に芯まで惚れられ ている女、銀河史上まれにみる名カップルだ。 南征の前、紫紋や麗羅達と、宴会していたが、こっそり抜け出して、李扇とデートするって話もあったが、 めんどくさいので除外した。これも又、同人誌行きだ。 それに対して、蘭蘭に求婚された林の運命は…この二人の関係は、恐らく最終回まで、描くことはないけ ど、それをお楽しみに。すっかりままごと夫婦です。 | |
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